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妄想挿話製作所(旧)


休止した荒野(主に5)の妄想挿話の保管庫です。念のため「はじめに」に目を通しておいてくださいね。

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SS 私の望むものは……

夜の荒野の岩陰で、少年がひとり焚火を見つめている。彼の影だけがくっきりと、背にした岩壁に映っている。
古い月の浮かばない夜は色濃く彼の青い髪を隠す。されども、炎に照らされた瞳はより赤みを増していた。
片隅にはひとり分の寝床が作られ、遠くに捌いた獣の骨と皮が棄てられている。ことさら遠くに飛ばされた獣の頭部には、小さな貫通痕があった。
少年は目線を落とし、鈍く光る祖父の形見の手入れに戻る。
暗い空の下、溜息が白く濁って消えた。





仕込み中のパン屋の厨房で、青年は得意そうに隊員証を幼馴染の娘に見せた。その瞳はこれからへの夢想、自らが活躍する未来に輝いている。表裏一体である危険のことなど、まるで映っていない瞳だった。
幼馴染の娘は呆れた顔に心配を隠して、いつものように明朝の準備をしながらたわいない会話を続ける。娘が青年の力説をいなし、小言を付け加えていくうちに、青年の元気がなくなっていった。
銃士隊に入れたことで、求めるかたちを与えられたと青年は信じていたのだ。
幼馴染が不機嫌そうである理由など、まるで気づいていなかった。





両手に返る衝撃に三つ編みの少女は目を見開いた。負傷した様子もなく盗賊は襲い掛かってくる。戦斧をかわしたのはほぼ無意識、というより偶然転んだからだった。倒れた拍子に我にかえり、体勢を立て直す。
両手から銃声が轟いた。少女の武器が見張りの盗賊をかろうじて倒していく。硝煙で、少女の周囲は霞がかっていた。
場にいた最後の一人が倒れ、少女は荒い息をつきながら周囲に銃口をめぐらす。3周ほどぐるりぐるりと見回して、やっと二丁の武器を腰に収めた。
小さく口笛を吹いたのは、彼女なりの意地だったかもしれない。





遠くへ行ってはいけないよ。
たった一人の男の子に向かって、村の全員がそう言った。
男の子は律儀にそれを守って、村から遠くへ行かなかった。剣術稽古やベリーの採取、大人へのいたずらに忙しく、遠くを夢見る必要もなかったのだ。男の子の日々はご飯と遊びと睡眠、それに少々の小言でできていた。
けれど彼は今、初めて見た女の子の手を握り、はるか遠い海辺に立っている。
戦争。力。因子適合者。耳慣れぬ言葉に戸惑いながら、けれど男の子は女の子の手を引いた。
君を守る。
男の子は少年になろうとしていた。





シャベルを担ぎ、今日も少年は意気揚々と発掘に向かう。子供のころからの習慣は、周囲の大人や幼馴染の少女を呆れさせてもなお続いていた。
幼い日、1本のネジから始まった少年の情熱は、けれどもすでになじみの遺跡を越え、遠く荒野で己の力を試したいという憧憬に変わっている。しかし彼には、村を出るために必要なもの、一人前だと認められる証がなかった。かつて大人たちに与えられたそれを、少年は幼馴染の少女に譲ってしまったからだ。
平穏な村から外へと飛び出す方法を、彼なりに懸命に考えながら、少年は今日もあちこちを掘り返していた。






これはまだ、望みながらくすぶる主人公たちのプロローグ。



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