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妄想挿話製作所(旧)


休止した荒野(主に5)の妄想挿話の保管庫です。念のため「はじめに」に目を通しておいてくださいね。

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大丈夫、仲間がいるから

それは、“いつも”から少しだけ、はずれてしまったお話。


「まったく、娘の風邪を心配しておいて、自分が風邪を引くんじゃ世話ねえわな」
「ははは、面目ないです」
鍛えられた手足のために余計に大柄に見える青年が、チームの最年長に向け大げさな身ぶりで首を振る。
緑がかった黒髪の頭をかく最年長者は、めずらしく宿の寝台に横になっていた。眼鏡をはずされた緑の瞳が、熱を帯び潤んでいる。
彼が咳き込むと、青年は鳶色の瞳をしかめ、肩をすくめた。縮れた鳶色の髪がその拍子に揺れる。
「ま、昨日のおかげで懐はしばらく問題ないからな。ゆっくり養生すればいい。俺もこの町のお嬢さんたちと仲良くできるしなッ」
「言葉に甘えて、そうさせてもらいます。二人のことは任せますが、財布をあまり軽くしないでくださいね」
「おう、大船に乗った気でいてくれ! じゃな、お大事に」
どんと日に焼けた胸をたたくと、肉厚な手を振り、大柄な青年は部屋から出て行った。
派手な民族衣装が翻るのを見ながら
「あなたが一番心配なんですがねえ……」
小声で最年長者はぼやいた。

冷えた布地の感触に、最年長者はふと目を覚ました。知らぬ間に寝入っていたらしい、とそこで気づく。
眼鏡がないせいで、少し視界がぼやけていたが、相手はすぐにわかった。
「ありがとうございます、リーダー」
「あ、ごめん。起こしちゃった?」
茶色のみつ編みを垂らし、紅一点のリーダーが屈みこむ。空と同じ青色の瞳が、心配そうに病人の顔色を見つめていた。
「調子、どう?」
「ゆっくり休めるおかげで回復も早いようです。明日には動けると思いますよ」
「そっか……よかった。風邪、私が混乱してフリーズ撃っちゃったせいだから。ひどくなったら申し訳ないなって」
不可抗力とはいえ、悔やみうつむくリーダーに、病人は微笑んでみせた。
「自己管理が至らなかっただけです。リーダーのせいばかりではないですよ」
「ん。……あそうだ、お粥作ったんだけど、食べられそう?」
「――――そうですね、いただきましょうか」
「わかった、持ってくるねッ」
ぱっと快活な笑みを見せると、リーダーである少女は部屋を飛び出していった。
「味気ないくらいがちょうどいいでしょうしね……」
紫の裾が戸口から消える寸前、病人はそう呟いていた。

夕日が、1日剃らないせいでいつもより長い無精ひげの面に差し込む。そこへ床のきしむ音もさせず、近づいていく影がいた。腰の隠しから鈍く光るものを取り出し、無精ひげの男へ――
「気配を隠して、何のつもりです?」
びくりと影が揺れる。片目だけ開いて、無精ひげの保護者がこちらを見ていた。
「起きてやがったんなら、そう言えよ」
「気配を消した存在が近づいていたら、自然に目を覚ますものでしょう? 渡り鳥なら、なおさらにね」
「チッ」
唇を尖らせて顔を背けるのは、眉をしかめても秀麗な顔立ちの少年である。白銀の髪と淡い紫の瞳が、それぞれ夕日に紅く輝いていた。
「アンタ、明日には治るか」
「そうですねえ。かなり調子も良くなりましたし、朝には大丈夫だと思いますが」
「なら、あと一晩だけ耐えればいいんだな」
「“耐える”?」
「あのバカ二人の面倒みんの」
不機嫌な、というより疲労困憊した休日の保護者の顔をした少年に、本来の保護者役は吹き出しそうになったのを何とかごまかした。
「ええ、よろしくお願いしますよ」
「ッたく、うんざりだぜ……」
最後まで悪態をつきつつ、踵を返して少年は部屋から立ち去る。
その際にさりげなく、常人では気づかないほど注意深く、鈍い光沢をはなつ物を置いていったのを、保護者役の目は捉えていた。
「できれば道具も持ってきてほしかったですが――まあ、進歩というものでしょうかね」
少年の好物が描かれた缶を片手に、保護者役は目を細めて苦笑した。



それは、“いつも”から少しはずれた、想い出へと変わるお話。


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